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2013年6月15日土曜日

「ママレボ通信No2」 水野参事官のTwitter暴言は、原発被災者に対する復興庁や政府の態度そのものが現れている

「ママレボ通信No2 」

【水野参事官のTwitter暴言は、原発被災者に対する復興庁や政府の態度そのものが現れている】

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【水野参事官のTwitter暴言は、原発被災者に対する復興庁や政府の態度そのものが現れている】
■Twitterでは、水野氏を擁護する人も…

 ワイドショーまで騒がしている、「復興庁、水野参事官の Twitter暴言問題」。
  匿名とはいえ国の高級官僚が、被災者を支援している団体の人たちに対して、Twitter上で「左翼のクソども」とバカにしたり、一刻も早く進めなければならない「原発子ども・被災者支援法」について、「あいまいにしておくことも解決法のひとつ」などと職務放棄ともとれる内容をツイートしたりしていたことに対して、「また、官僚の不祥事?」というくらいにしか受け止めていない人が多いのではないでしょうか。
 なぜならテレビや新聞では、「福島の被災者支援を担当していた幹部職員が暴言……」というくらいにしか紹介されておらず、水野氏がTwitterでつぶやいた数々の暴言が含んでいる“本当の深刻さ”まで掘り下げているメディアは少ないからです。
 その証拠に、水野氏のツイートをまとめたインターネット上の掲示板には、「クソ左翼はしょせん嫌われ者」「官僚は大変だということがよくわかった」「どこが問題発言なのかよくわからない」となどという書き込みが寄せられています。
 これは、水野氏の暴言以上に残念なことではないでしょうか。
 そこでもう一度、水野参事官が復興庁で担っていた仕事がどれほど重要であったか、今回のTwitter暴言がどれほど深刻な問題を含んでいるか、を考えてみたいと思います。

■原発・子ども被災者支援法ってなに?

 水野参事官は、昨年6月21日に超党派の議員立法で成立した「原発子ども・被災者支援法」(以下、支援法)を推進する担当官でした。
 では支援法って、いったいどんな法律なんでしょうか?
 支援法とは、放射線の影響を受けやすい子どもや妊婦を守ろうという趣旨でつくられた法律で、「汚染された地域に住み続ける人」も、また「移住や避難をする人」も、「避難先から(汚染地へ)帰る人」も、みんな等しく「安全に暮らすための支援が受けられる」と謳われています。
 また、この法律の画期的なところは、以下の点がしっかり明記されていることです。

1.原発事故の責任は、原子力を推進してきた国にある
2.放射線の影響は科学的に解明されていないのだから、予防原則に立った措置をとる
3.万が一病気になった場合は、被害者ではなく“国”が被ばくとの因果関係を立証する責任を負う

しかし、この法律は「理念法」なので、具体的な施策は被災者の声を聞きながら決定する、ということになっていました。
 そのためこの一年間、福島県から各地域に避難している方々や、子どもの被ばくを心配しながらも福島やその他のホットスポットに住み続けている方々、そして支援者のみなさんが、復興庁に数え切れないほどの要望をあげてきたのです。




■どんな要望があがっているか
 たとえば、「住宅」の問題。
 原発が爆発して、いのちからがら逃げてきた人たちは、「とりあえず、どこでもいいから」と借り上げ住宅や雇用促進住宅などに入りました。しかし、かならずしも子育てに良い環境でないことも多く、避難が長期化するなかで再度、引っ越しを希望している人も少なくありません。ですが、避難場所を移ると、二度目からは家賃の補助を受けられなくなるなどの弊害があります。
 それでしかたなく、「お風呂に入るのもこわいので、子どもといっしょに電気を消して(近所に気づかれないように)入っている」という母子避難ママもいるそうです。
 また、これから新たに避難したい人に対する住宅支援は、昨年末で打ち切られてしまいました。“被ばく”は蓄積ですから、これから避難してもおそくありません。実際に、「子どもの進学に合わせて」「夫の仕事が見つかったら」と、考えている人はまだいるのです。
 さらに、夫は被災地に残り、母子のみで避難している家族もたくさんいます。週末になると、深夜の高速道路をパパが車を走らせて妻子に会いにくる、という厳しい状況が丸二年以上続いているのです。疲労がたまって交通事故を起こした方もいます。

 妻子に会いに行くための交通費補助も必要ですが、家族いっしょに移住するための雇用支援や住宅ローン減免などの措置も急務です。


 また、汚染地に残って暮らす子どもたちの中には、原発事故後「一度も外を歩いていない」という幼児も少なくありません。
 そのため、体力の低下はもちろん情操教育の面でも支障が出はじめています。さらには、もっとも重要な子どもたちの健康診断でさえ、じゅうぶんに行われていません。
 ここでご紹介した問題は、ごくごく一部。氷山の一角です。
 こうしたことを具体的に施策に反映するためには、(1)被災者の意見を聞くこと、(2)そのうえで予防的原則に立ち、支援対象地域を決めること、が必要だと支援法に明記されています。



■水野参事官が担っていた重要な任務

 つまり、復興庁の水野参事官は、まさに原発被害者の身の上に起こっているさまざまな問題をひとつひとつていねいに聞き取り、予算措置を付け、具体的な施策に落とし込むというたいへん重要な任務を担っていたわけです。
 そこで、もう一度冒頭のツイートを思い出してみてください。
被災者や支援者が集まる会議が終わったあと、「左翼のクソども」とツイートしたり、「あいまいにしておくことも解決法のひとつ」などとふざけたことを堂々とつぶやいていることが、いかに原発被害者や支援者たちをバカにしているかがおわかりいただけるでしょう。
 一連の水野参事官の暴言ツイート問題を受けて6月14日、参議院議員会館で「緊急会合」(写真下)が開かれました。
 支援法を成立・推進してきた議員連盟の主催によるものです。
 この会合に出席した復興庁の統括官である伊藤氏は、水野参事官のTwitter暴言について、「不適切な内容であった」と詫びたうえで、6月13日付けで福島支援の担当から外したことを報告しました。
 これに対し、子ども被災者支援議連の幹事長を務める谷岡邦子参議院議員(みどりの風)は、「水野氏は昨年秋まで本名でTwitterをやっていた。周囲もこれを知っていながら、彼のツイートを是認するような風潮があったのではないか」と指摘し、支援法が遅々として進んでいないのは、「水野氏ひとりの責任ではなく、復興庁はもちろんのこと政府全体がそのような姿勢であったからではないか」と厳しく追及しました。
 また、議連の事務局長を務める川田龍平参議院議員(みんなの党)は、「私は、自分が薬害エイズで苦しんだのと同じように、病で苦しむ子どもを出したくないという一心でこの法律をつくった。子どもたちの医療や健康診断については、1分1秒が大事になってくる。これは福島だけの問題ではなく、関東も含めホットスポットに住む子どもたち全員の問題だ。子どもが取り返しがつかないことになる前に、いまやらなくては。復興庁のみなさんも、任期の間だけやり過ごしたらいいというのではなく、いま何を成すべきか考えてほしい」と述べました。

そのほか、印象に残った出席者の発言を記しておきます。

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■福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク(SAFLAN)共同代表 河崎健一郎さん

 「水野氏の発言は復興庁全体の体質を表しているのではないか。3月17日に根本復興大臣は「被災者支援パッケージ」という被災者の要望とはまったく異なる支援内容を打ち出しており、『支援法に謳っていることは、このパッケージにおよそ反映している』という趣旨の発言をしている。今回の水野氏のTwitter暴言と合わせて考えると、復興庁自体が支援法をサボタージュしているのではないかという疑念を持たざるを得ない。そうでないというなら、いつまでに何をやるか、予算立てして進める必要がある」

■子どもたちを放射能から守る全国ネットワーク 世話人 伊藤恵美子さん

「支援法をすみやかに実行してほしい、という復興庁宛の意見書が全国60以上の議会や団体から提出されている。なかには、お母さんが毎日議会に足を運び、やっと通った意見書もある。この背景にはたくさんの人の気持ちがあることを忘れずに、きちんと対応してほしい」



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 とにかく、今回のTwitter暴言事件は、水野氏ひとりを処分してすむ問題ではありません。背景には、こんなストーリーもあるのだということを知っていただければと思います。
 いまこの瞬間も子どもたちは被ばくしています。避難されている方も、被災地に留まっている方もたいへんな思いをしています。それを踏まえたうえで、今回のTwitter暴言事件を考えてみてくださると幸いです。
                                                                                 ママレボ@和田秀子








  

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