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2014年6月13日金曜日

第3回 甲状腺評価部会 傍聴レポート

 遅くなりましたが、6月10日に福島市で開催された「第3回甲状腺検査評価部会」の傍聴レポートをアップします。
 今回の部会では、とっても重大な下記2点が明らかなになりました。

1.福島県で、すでに甲状腺がんで手術しているお子さんたち51人については、「リンパ節転移」「声のかれ」などが見られた。(つまり、これまで甲状腺がんが見つかったのは「スクリーニング効果」だと言われていたが、そうではない可能性もあるということ)

2.手術した患者さんの臨床データは、福島県立医大の独占状態で、委員にも共有されていないということ。

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 「甲状腺検査評価部会」の傍聴レポートをお届けするのは初めてなので、そもそも「甲状腺検査評価部会」とはなんなのか――、という基本的なところからご説明しておきます。

「甲状腺検査評価部会」というのは、現在、福島県で行われている「県民健康調査」のなかで、もっとも関心が集まっている“小児甲状腺がん”の問題にのみ特化して話し合うために開かれる専門家会議のことです。

いつも傍聴レポートをお届けしている「県民健康調査検討委員会」が、「甲状腺検査評価部会」の本会議にあたり、検討委員会の委員の多くが、この甲状腺検査評価部会にも参加しています。


■甲状腺がんの手術は“過剰診療”なのか?

 前回の甲状腺評価部会では、現在福島県で行われている小児甲状腺がんの手術などが “過剰診療” にあたるのではないかという点について、疫学の専門家である渋谷健司氏(東京大学大学院・医学系研究科教授)が疑問を投げかけ、激しい議論が起こりました。

 3回目も前回に引き続いて渋谷氏が、県民健康調査で甲状腺検査を担当している鈴木眞一氏(福島県立医科大学・教授)に対して、「手術をしなくても、将来悪さをしないがんまで切除しているのではないか」と疑問を投げかけ、過剰診療の可能性があることを厳しく追及しました。

 そもそも私たちにとっては「過剰診療」という言葉自体が耳慣れないのですが、過剰診療とは、処置をしなくても健康や寿命に大きな影響がないのに、わざわざ手術などの治療をして、患者に負担をかけることを意味します。
 渋谷氏いわく、韓国やアメリカなどでは、自覚症状のない患者に対して、病院で気軽に甲状腺エコー検査をするようになってから、多くの甲状腺がん患者が見つかっており、手術をしなくても寿命がまっとうできるような悪性度の低いがんであるにもかかわらず、手術で切除する例がふえて問題になっているとのこと。

 もともと甲状腺がんは、他のがんとちがって大きくなったり、転移したりしづらいということから、むしろ切除することによるQOLの低下(傷が残るとかホルモン剤を飲み続けなくてはならないなど)を問題視するむきが強いそうです。

 しかし福島県では、これまで調査した事故当時18歳以下の子ども約368000人のうち、悪性ないし悪性疑いが90人見つかっており、うち51人がすでに手術をすませています。
 渋谷氏は、細胞診をしたり、手術をしたりした90人について、「過剰診療であったのではないか」と疑問を投げかけているのです。


すでにリンパ節転移や、声のかすれがあった

 これに対して鈴木氏は、むきになって過剰診療であることを否定しました。鈴木氏の発言の趣旨は、以下のような内容でした。

「本当に必要な人だけ細胞診をしている。悪性ないし悪性疑いが出ても、通常の臨床レベルで過剰診療といわれるものまで、あえて治療しているということはない。実際は、ほとんどがリンパ節転移が見つかったり声がかすれたりしている。そういう条件があるから診療をしているので、決して過剰にはならない。通常の診療でも、通常、治療を勧められる範囲だ。子どもだからといって、心配させないためにとらなくていいものをとっているわけではない」

 この発言によって推察されることは、以下の2点です。

1)これまで福島県立医大は、すでに見つかっている小児甲状腺がんについて、「スクリーニング効果」によるものだ、という見解を示していた。しかし
、検査をしなくても近いうちに自覚症状が現れたのではないか。つまり「スクリーニング効果」ではない可能性があるのではないか。

2)チェルノブイリ原発事故の影響で甲状腺がんになった子どもたちの多くも、早い段階でリンパ節転移が見られた。
 つまり、放射線被ばくによる影響が疑われるのではないか。

こうした鈴木氏の発言は、さらにデータなどの検証が必要ではありますが、いままでの県立医大や検討委員会の見解を覆す重大な発言です。


■データ開示をこばむ、県立医大

 
「過剰診療ではありません」と繰り返す鈴木氏に対して渋谷氏が、「ならば、個人情報に抵触しない範囲で臨床データを公表してもらわないと、過剰診療ではないかという疑問がぬぐえない」といった趣旨の発言をしたところ、鈴木氏は、「個人のデータについてはお話しできない。論文で公表する」という内容の返答をしました。

 これに対して、春日文子委員(日本学術会議 副会長)からは、「データは誰のものなんでしょうか?」という問いかけがありました。
 また、清水一雄部会長(日本医科大学 名誉教授)は記者会見で、「臨床データについては、我々も知りたいし、知る義務がある。県も報告する義務がある」とコメントし、検討委員会のほうでもデータ開示を働きかけていくつもりであると述べました。

 しかし、このように重要なことを情報共有できていないまま「検討委員会」を開いていることに驚いてしまいます。
 また、鈴木氏は、ことあるごとに「県民健康調査は、県民の健康を見守るために行っている」と述べているわりには、真実を発表するのは、“論文”だと言っています。
おそらく、先に海外に発表して、県民が知らされるのはずっと後でしょう。それのどこか「見守り」なんでしょうか。

 とにかく、この日の甲状腺部会では、データ開示を求めていくことと、さらに被ばくとの関係性も追求していくことが確認され、大きく一歩前進した形になりました。


 しかしながら、私は心の中で、「スクリーニング効果ならいいな」という淡い期待を抱いていたので、その可能性が限りなく少なくなってしまったことに関して大きなショックを感じました。
 1日も早く、できるかぎりの情報を開示し、被ばくとの因果関係を究明し、真の安心・安全を提供していただきたいと思います。


 甲状腺評価部会の動画は、OurPlant-TVさんがまとめてくださっていますので、どうぞご覧ください。

リンパ節転移が多数~福島県の甲状腺がん




  ママレボ@和田

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